介護の現場では、利用者さんの症状、特に痛みに気を配る必要があります。
毎日訪問しているヘルパーさんが、利用者さんにとっても大事な目となり耳となります。
- 病院へ連絡するのに抵抗がある
- 訪問看護へなんて伝えたらいいのか分からない
- 普段と様子が違うのはわかるんだけど
- クリニックへ電話したら嫌な対応をされた
このような悩みをお持ちのヘルパーさんへ見ていただきたい内容です。
【ヘルパーさん向け】痛み強さを医師・看護師に伝える方法 Numerical Rating Scale(NRS)
医療従事者は診察のたびに痛みを評価しますが、訪問診療は月に1回〜2回程度です。
診察の合間に患者さんの痛みを把握するためには、日々ケアをしているヘルパーさんの報告が必要です。
患者さんの状態に関する重要な情報を医療チームに伝え、痛みの状態を把握することは患者さんをケアする上で最も重要なことの一つです。
では、どうすればこれを最善の方法で行うことができるのでしょうか?
以下の情報は、痛みを認識するのに役立つ方法をご紹介します。
痛みを理解する
痛みにはいくつかの種類があります。
- 急性(最近発症したもの)
- 慢性(昔からあるもの)
- 部分的なもの(腰など)
- 拡散的なもの(目と頭と背中とお腹など)
覚えておくべき重要なことは、痛みは常に「患者さんの感覚」だということです。
そして、痛みを認識することはご本人とどれだけ普段コミュニケーションが取れているかによって異なります。
患者さんが痛みを伝えることができれば、それを記録して医療従事者に何が起こっているのかを知らせることができます。
患者さんが自分の感じていることを伝えられない場合、痛みを評価することはより困難になりますが、そのためにはヘルパーさんがが感じていること、患者さんの身体的なサインや症状に注意する必要があります。
痛みの程度
痛みを評価する最初のステップは、現在の痛みの程度を知ることです。
痛みの程度を表すのに便利なツールがあります。
大人の場合、通常0から10までの数字で表され、0は痛みがないこと、10は想像しうる最悪の痛みです。
患者さんに、そのスケールのどこに当てはまるかを選ぶように聞いてみてください。
こちらが痛みのレベルとその意味です。
- 0は痛みなし。
- 1から3は軽い痛み。
- 4から6は、中程度の痛みです。
- 7~10は強い痛み。
0が痛みなし、10が我慢できないくらいの痛みだったら「今の痛みはいくつですか?」
これらのサインには、顔の表情、足(リラックスしているか、緊張しているか、蹴っているか)、活動性(静かに寝ているか、もぞもぞしているか、弓なりになって動いているか)、泣き声、慰めやすさ(話しかけると少し気分がよくなるか)なども見るポイントです。
意思疎通が困難な場合は、表情で読み取ります。
痛みの許容範囲
痛みの許容範囲は人それぞれです。痛みが5でも我慢したい人もいれば、3でも往診を希望する人もいます。
ヘルパーさんから見て、患者さんの許容レベルを知ることも重要です。
もし、患者さんが痛みレベル2〜3で問題ないと言っているのであれば、医療機関としても相談の上経過観察にする事もあります。
一方高齢者の場合、4以上の痛みのレベルでは、生活の質が低下することが多いにもかかわらず、我慢しようとする人もいます。
往診や薬を飲めばもっと楽になるのかどうか、考えてもらうとよいでしょう。
痛みの場所
痛みの部位は、聞くたびに同じかもしれません。例えば、いつも頭の右側が痛いと訴える方がいるとします。
しかし、慢性的な痛みであっても、新しい痛みが生じることがあるため、痛みの場所を聞くことは重要です。
痛みの場所が変わったり、新しい痛みが出てきたりしたら、その情報を記録して訪問診療クリニック・訪問看護に伝えてください。
緩和
痛みの評価には、緩和が重要です。
まず、患者さんに「どうしたら楽になるか」、つまり「緩和」するのかを聞いてみるとよいでしょう。
薬で落ち着く方もいれば、往診で安心する方、体位変換で落ち着く方もいます。
何が痛みを和らげるのかを知ることは、患者さんの快適な生活を助けることにつながりますし、もし痛みの緩和方法がわかれば、医療従事者に重要な手がかりを与えるかもしれません。
また、何が痛みを悪化させるのか、あるいは痛みを誘発するのかを尋ねます。
特定の動作や特定の側に寝た場合などです。痛みのある部分に触れること、褥瘡など痛みのある部分に圧力をかけることなども考えられます。
そうすることで、不快な症状を引き起こすものを避けることができ、医療従事者に重要な手がかりを与えることができます。
非言語的徴候の評価
痛みを言葉で表現できない、あるいは10段階も不明な場合、患者さんの痛みを評価することは困難な場合があります。
その場合は痛みを感じている人が示す徴候や症状を観察して報告しましょう。
- 顔面蒼白、またはしかめっ面
- ベッドで身動きがとれなくなる
- うめき声、またはむせび泣く声
- 落ち着かない、興奮する
- 不安で緊張しているように見え、足を引き寄せたり蹴ったりする。
- 痛みのある部分を守ったり、その部分に触れないようにする。
症状が多ければ多いほど、また症状が強ければ強いほど、これを手がかりに、痛みを “軽度”、”中等度”、”重度 “のいずれかで記録することができます。
心理・社会的要因
心理的・社会的な要因が痛みに関与していることはよくあることである。
このことは、痛みの経験をより現実的なものにするわけではありませんが、痛みへの介入をより医療・介護両方のアプローチでフォローする上で役に立ちます。
例えば、進行がんの患者さんは、恐怖や孤独を経験することが多いです。
ヘルパーさんががケアしている人の苦しみの感情的な背景を受け入れることは、効果的で人道的なケアを提供するための鍵になります。
記録を残す
ヘルパーさんができる最も重要なことのひとつは、患者さんの痛みと、痛みの治療について正確に記録することです。
痛みを評価したら、その程度と場所、感情などを記録・報告します。
薬や治療が効果的であったかどうかも記録してください。また、痛みはどのようにすればよくなるのか、あるいは悪くなるのか、患者さんから聞いたことも書き留めておきましょう。
これは、医療専門家とチームを組んで、最高の緩和ケアを提供するための簡単な方法です。
痛みの記録は詳細である必要はありませんが、いくつかの要素があれば、医療従事者が痛みの場所と重症度の両方、および有効な治療法、無効な治療法をよりよく評価するのに役立ちます。
まとめ
患者さんの痛みを評価することで、痛みを最小限に抑えながら最善の生活環境の提供ができます。
痛みを客観視するために、痛みのスケールを使ったり、痛みの記録をつけたりすると、医療従事者は追加の治療が必要かどうかを知ることができます。
また、記録をつけることで変化を知らせることができ、必要なときにできるだけ早く医療従事者に連絡することができます。
台東区のヘルパーさんにとって、気軽に連絡できる訪問診療(在宅医療)クリニックを目指します。