在宅医療には、患者さんご本人だけでなく、ご家庭の協力も必要です。
在宅医療をスタートする際には、不安なことや心配なこともあるかと思います。
今回は、在宅医療(訪問看護)をはじめる際に、ご家族がどのような心構えで臨めばよいかをお話ししたいと思います。
大切なのは、自分一人で抱え込まないこと。また、医療機関との関わり方、事前準備の仕方についてもご紹介したいと思います。
在宅医療・訪問看護を利用する際に家族が準備するものと気持ち
在宅医療は、住み慣れた自宅で療養できるというメリットがある一方で、家族が中心となって患者さんの日常的なケアを行う必要があります。
介護などの生活支援に加え、患者さんの状態によっては医療的ケアも担うことになり、ご家族の負担が大きくなるのは事実です。
このとき大切なのは、「誰か一人に負担をかけすぎないこと」です。
特定の人に負担がかからないように、ご家族みんなで役割分担し、互いに協力し合うことが重要です。
また、一人で背負い込まないことも大切です。親族や知人に話を聞いてもらうだけで、気持ちが楽になることもあります。
頑張りすぎず、無理をせず、できるだけ周囲と協力できる体制をつくることが、介護を長続きさせるコツです。
患者さんにとっては、主たる介護者がいないときでも、頼れる家族がたくさんいるということも安心材料になります。
また、在宅医療だからといって、必ずしも ” 全面的なケア ” が必要なわけではありません。
在宅医療における医療機関の役割
在宅医療における医療機関の役割は、患者さんの傷みやストレスを軽減し、快適な生活をサポートすることです。
患者さんの希望や状態、尊厳を尊重しながら、誰がどこまで日常生活に関わるべきかという指針を相談し定め、家族と医療介護事業所で共有しておくとよいでしょう。
患者さんの希望や気持ちをきちんと受け止めるために、家族間でよくコミュニケーションをとることが大切です。
在宅医療(訪問看護)の開始にあたってご家族が留意すべき点
在宅医療(訪問看護)を始めると、医師や看護師など様々な人がご自宅を訪れます。
入れ替わり立ち替わり人が来るので最初は慣れないかもしれませんが、良い意味で気を使わず、日頃のケアを通して次第に人間関係が築けるようになることが重要です。
訪問する医師や看護師は在宅医療のエキスパートであり、ご家族と一緒になってケアに取り組むチームです。
在宅医療・介護・看護に関する不安や悩み、疑問などを書き留めておき、訪問時にスタッフに相談しましょう。
現在、患者さんやご家族が何に困っているのか、どのようなサポートを希望しているのかを共有し、一緒に解決していくようにしましょう。
また、しんどいときは、素直にその気持ちを在宅医療スタッフに伝えてください。在宅医療チームの重要な役割のひとつに、悩みや不安を抱えているご家族のケアというものがあります。
緊急時のこと
緊急時に備えて、応急処置、連絡経路、連絡方法などを確認しておく必要があります。
在宅医療の利用当初は、医療従事者が必ず緊急時の連絡手段を教えてくれます。在宅介護中に緊急事態が発生した場合、まずその番号に電話しましょう。
かかりつけの医師や医療関係の機関の電話番号をチェックしておき、誰でもわかるように目立つところに貼っておくとよいでしょう。
電話をすると、その時に必要な処置をしてくれるはずですし、救急車を呼ぶ必要がある場合にもやり方を教えてくれます。
- 将来どのような状態になるのか
- 緊急時にどのような応急処置が必要なのか
- どのような状況で電話をすればいいのか
あらかじめ医師に相談しておくこともできます。
将来の見通しや想定される状態をあらかじめ知っておくことで、いざという時に落ち着いて対応することができます。
訪問診療クリニック・訪問看護ステーションは、24時間365日体制で地域の皆様の在宅療養をサポートしています。
ご自宅にあると便利なもの
ここからは自宅にあると便利なものについて説明していきます。ケアマネージャーさんに依頼して準備するものもございます。
在宅医療(訪問診療)の利用を検討される理由はさまざまでしょう。
いずれにしても、これまで病院で受けていた医療を自宅で受けることになるため、今後、自宅環境の調整が必要になってくる可能性があります。
現在入院中の方は、病院職員や退院支援をしてくれるケアマネジャーに相談されることをお勧めします。
住環境の整備
状況に応じて、ご本人が自宅で過ごしやすいように、またご家族が介護しやすいように住宅をリフォームしたり、福祉用具を準備したりします。
福祉用具のレンタルの有無について、ケアマネジャーに相談してみましょう。
出入り口
出入り口の段差やドアの幅を確認しましょう。
特に、ストレッチャーや車いすを使用する場合は、車いすの人が通れる幅の出入り口が必要です。また、マンションなど2階以上へのエレベーターがある場合は、エレベーターの幅や奥行きを確認することが大切です。
患者さんの部屋
患者さんが快適に過ごせる部屋を用意しましょう。トイレが近いこと、家族とのコミュニケーションが取りやすいこと、階段を使わずに生活できることなどが条件となります。
必要に応じて、リビングにベッドを移動して患者さんの部屋を作る事もあります。
電動介護ベッド
在宅医療には、電動介護ベッドの使用をお勧めします。
ベッドの高さを自由に調節でき、モーターで頭や足を上げ下げできるので、ベッドへの乗り降りや立ち上がり時の患者さんや介護者の負担が軽減されます。レンタルも可能ですので、担当のケアマネジャーにご相談ください。
トイレ
トイレはベッドの近くにあり、階段を使わずに行けることが理想的です。和式よりも洋式の方が使いやすいでしょう。レンタル出来るポータブルトイレもあります。
お風呂
介護者が一緒に入れるスペースを確保しましょう。浴室の段差をなくし、手すりを設置することをおすすめします。座面の高いシャワーチェアは、体を洗うときの負担を軽減し、安定させることができます。
チャイムや鈴
同じ家にいても、何かあったときに別の部屋にいる家族を大声で呼び出すことが困難な場合があります。介護者が他の家族をすぐに呼ぶことができない場合もあります。
チャイムや鈴などを手の届く場所に置いておくなど、大声を出さずに家族を呼べる方法を検討してみてください。
大きな壁掛けカレンダー
書き込みの出来る大きめの壁掛けカレンダーがあると便利です。
- ヘルパーさんは何時頃
- 訪問看護は何曜日に
- 訪問診療は何日に
ご家族だけでなく、他の医療介護事業所の方も見てわかるようにすると便利です。
介護保険の手続き
介護保険制度は、65歳以上で介護保険料を納めている方、または40歳以上64歳未満で特定疾病により要介護認定を受けている方が利用できる制度です。
介護保険制度を利用するには、市区町村の窓口で申請し、要介護認定を受ける必要があります。
申請から要介護認定まで時間がかかりますので、制度を利用できそうな方は早めに市区町村の窓口に相談してください。対象となりそうな方は、早めに市区町村の窓口にご相談ください。
なお、介護申請と訪問看護については、こちらで詳しく解説しています。
まとめ
在宅医療は、自宅にいながらにして医療を受けることができる方法です。一方で、介護の負担が家族にのしかかるのも事実です。
介護を長続きさせるコツは「一人で頑張りすぎないで」ということです。家族は介護の責任を分担し、時には介護の現状を訴えることも必要です。
在宅介護における家族の役割は、患者さんが痛みやストレスを感じることなく、穏やかに暮らせるようにサポートすることです。
家族は、患者さんの状態や希望、尊厳を尊重しながら、どこまで介護者として関わるべきかという指針を立て、それを家族間で共有することが必要です。
在宅療養が始まると、医師、看護師、介護スタッフなど多くの人が患者さんを訪ねます。訪問専門家だけでなく、看護師や介護士など、家族とともに働くチームです。
不安なことや心配なことは何でも相談し、日々のケアを通じて信頼関係を深めていきましょう。
今後起こりうる症状や緊急時の対応について事前に確認し、緊急時の連絡先をわかりやすい場所に貼っておくようにしましょう。
在宅医療をスムーズにスタートさせるために、段差解消や手すりの設置など、生活環境の整備を心がけましょう。
また、福祉用具をレンタルすることも可能です。介護保険が適用される場合は、できるだけ早く申請しましょう。